「日本の生け花から影響を…」キュレーターが語る巨匠ウォーホルの制作のヒミツ
生け花文化からの影響…
『アンディ・ウォーホル・キョウト』展示風景
【女子的アートナビ】vol. 262
本展覧会の1章では商業デザイナーとして活躍したウォーホルの初期作品、2章では京都旅行についての資料やスケッチなどが展示されています。(詳しくは、前編※をどうぞ!)
この2章の最後に登場するのが「花」のシリーズ。本展前半のハイライトといわれている作品群です。
アンディ・ウォーホル美術館の主任学芸員で、本展キュレーターをつとめるホセ・カルロス・ディアズ氏は、「花」シリーズについて次のように解説しています。
ディアズ氏 ウォーホルは1956年に初めて日本を訪れたとき、生け花の文化から大きく影響を受けました。帰国してからも生け花に関する本を買い集め、学んでいたのです。本作品も、生け花の本にあった図版が元ネタになっています。1974年の作品ですが、当時使っていたシルクスクリーン手法ではなく、手彩色で描かれている点も特徴です。会場では、ウォーホルが制作の参考にした生け花の本も展示してあります。
有名作が続々登場!
『アンディ・ウォーホル・キョウト』展示風景
続く3章「『ポップ・アーティスト』ウォーホルの誕生」では、彼の超有名な代表作、キャンベル・スープ缶や花の作品などが登場します! 展示会場の雰囲気もがらりと変わり、明るくポップな雰囲気。気分もワクワクしてきます。
1960年代以降、ウォーホルは商業デザインから芸術的なファインアートの世界へと入っていきます。彼は「日常にありふれたものを芸術にする」とマスメディアに発表。シルクスクリーンの手法を使い、新聞記事や広告のイメージを取り入れた作品を次々と生み出していきます。
『アンディ・ウォーホル・キョウト』展示風景
また、彼は自分の制作スタジオを「ファクトリー」と命名。スタジオで華やかなパーティやイベントを開き、俳優や作家、ミュージシャンやパトロンと交流を重ね、アート界のスターになっていきます。
さらにアートだけでなく映画や音楽、ファッションの分野でも活躍。セルフプロデュースにもたけており、ウィッグをつけてジーンズをはくウォーホルの独特なスタイルは人気となり、ファッションアイコンにもなりました。
会場では、愛用のウィッグやジーンズ、ブーツなども見ることができます。
珍しいマリリンが…!
《三つのマリリン》について語るディアズ氏
子どものころからハリウッドスターやセレブに憧れていたウォーホルは、華やかなスターの肖像画を描きはじめます。4章「儚さと永遠」では、当時話題になっていた有名人の肖像画が展示されています。
なかでも注目したいのは、本展のメインビジュアルにもなっている《三つのマリリン》。
ウォーホルはマリリン・モンローの絵を50点ほど制作していますが、ポップな雰囲気のものがほとんどです。でも、本展の作品は顔がピンク色で、黒い影のようなものも描かれ、ややグロテスク。なぜ、こんな色彩にしたのでしょう?
ディアズ氏は次のように述べています。
ディアズ氏 本作品は、ウォーホルが最も脂の乗っていた時期に描いたもので、ほかのマリリン作品にはない過激な色の組み合わせになっています。また、この絵はマリリン・モンローが自ら命を絶ったすぐ後に描かれた作品です。彼女の存在をただ懐かしむだけでなく、ウォーホルが感じたものが作品に投影されているのだと思います。《三つのマリリン》は展覧会で展示される機会が少ない珍しい作品です。ぜひじっくりとご覧ください。
ウォーホルの光と影…
『アンディ・ウォーホル・キョウト』展示風景
作品が売れて有名になり、自分自身もセレブになったウォーホルですが、プライベートな部分は謎に包まれていました。最終章「光と影」では、今まであまり知られていなかったウォーホルの素顔に迫る作品が展示されています。
彼が亡くなる前年、1986年に描かれた《最後の晩餐》は、横幅が10メートル近くもある大きな作品です。キリストの顔やバイク、数字、アルファベットなどが白い画面に散りばめられ、一見しただけではどんな意味があるのか、まったくわかりません。
この絵について、ディアズ氏は次のように述べています。
ディアズ氏 画商から依頼を受けて制作した《最後の晩餐》では、ウォーホル自身が敬虔なクリスチャンであったという生い立ちを示しています。また、アルファベットで書かれている『THE BIG C』のCはキリスト(Christ)のCであるとともに、当時流行していたエイズが、当時の新聞などで「ゲイの癌 Gay Cancer」と表現されていたことからくるCancer(癌)のCであるとも考えられています。彼が敬虔なカトリック教徒でゲイだったことについては、あまり知られていませんでした。本作品は、ウォーホルのプライベートな部分を示した濃厚な作品です。
死の作品…
『アンディ・ウォーホル・キョウト』展示風景
最後の部屋では、先述の《最後の晩餐》と向かい合わせて、「電気椅子」や「病院」をテーマにした作品を展示。
ポップな絵のイメージが強いウォーホルですが、1960年代から「死」をテーマにした作品も制作していました。「死と惨事」シリーズや「頭蓋骨」の絵など、闇を感じる作品も多く手がけています。
特に、ニューヨーク郊外のシンシン刑務所にある電気椅子の写真をもとに描いた作品《小さな電気椅子》は、彼の代表作のひとつになっています。
1987年2月、ウォーホルはニューヨークで胆嚢炎の手術をした後、合併症で他界。58歳でした。
京都×ウォーホル
最後に、ミュージアムショップから京都老舗店とのコラボ商品をご紹介!
祇園の和菓子屋「鍵善良房」は、ウォーホルの花作品をモチーフにした干菓子を販売。ケースのデザインもおしゃれです。ほかにも、お酒や手提げ袋、さらに漆器などの高価なものもあり、見ているだけでも楽しいです。
また、京都を訪れた彼の足跡を辿る企画「ウォーホル・ウォーキング」も開催中。
例えば、京都駅前烏丸口に設置されている「ウォーホル・ウォーキング」BOXのQRコードにアクセスすると、「ウォーホルと京都」のストーリーを楽しむことができます。
京都だけでしか開かれない見どころ満載の展覧会『アンディ・ウォーホル・キョウト』。関西エリアの人はもちろん、それ以外の地域にお住いの方も、ぜひぜひ足を運んでみてくださいね!
※ 前編はコチラをどうぞ。
https://ananweb.jp/anew/440437/
Information
会期 :~2023年2月12日(日)
休館日 :月曜日(ただし祝日の場合は開館)、12月28日~1月2日
会場 :京都市京セラ美術館 新館「東山キューブ」
開館時間 :10:00〜18:00(入館は閉館の30分前まで)
※最新情報などの詳細は展覧会公式ウェブサイトをご覧ください
観覧料 :土日祝一般¥2,200、平日一般 ¥2,000、大学・高校生 ¥1,400、中学・小学生¥800